悠々と急げ

 ~未知との遭遇 in books & libraries~

中国の言い分 鈴木秀明

はじめに

日本人と中国人では、ものの考え方や他人との付き合い方などに、180度違う部分がある。

中国人はどうしてこういう態度をとるのか?

私はこの本を読んで、中国人もそれほど悪くないのではないかと思ったのです。

ざっくりとまとめてみました。

1.領土問題

(1)尖閣諸島(魚釣島)

<日本の言い分>

 1884年、福岡の商人・古賀辰四郎が探検隊を送り込み、調査した。
 1895年、「無主物先占」の決め事に従い、最初に領有を宣言した。
 したがって、正当な手続きを踏んで自国領としたのだ。

 1940年に無人島となるまでは、人が住み、鰹節の製造工場もあったのだ。

 ところが、1968年に日台韓合同海底資源調査で、石油資源埋蔵の可能性が指摘され、それまで見向きもしなかったのに、急に権利を主張し始めたのです。(合同調査などしなければ良かったし、仮に日本だけで調査しても結果もまじめに公表しなくて良いと思います。)

<中国の言い分>

 ①尖閣諸島は、16世紀の明朝の文献に「魚釣島」という中国呼称で登場する。清朝の文献もある。
 ②日清戦争の下関条約の日本に譲り渡した地域に入っていない。
  不利な状況で、尖閣諸島のことは口に出せなかっただけだ。
 ③サンフランシスコ講和条約で尖閣諸島はアメリカの施政下となったとき異議を唱えなかったというが、そもそもこの条約を認めていない。(こんなことを言い出したら、裁判所の決定は認めていないという凶悪犯のようなものだが)

<中国はどうしてこういう態度を取るのか>
①ルール無視の根底にある被害者意識

 中国人には、”欧米や日本に長らくいじめられてきた”という被害者意識が根強くある。

 一方で、自分たちの国が、4000年以上の歴史と高い文明を持った世界一の大国であったことを誇りにしている。

 日露戦争はともかくも、日中戦争は日本が仕掛けたものと思っている。

 また、第二次世界大戦後に、共産主義が厳しくたたかれたことも”いじめられた”という思いに拍車をかけた。

 中国人にとってルールとは、”長い歴史を通してお上が民衆を抑えつけるために作ったものであり、正当で合理的な理由を感じなければ、強く反発するのが常です。

 日本人はルールに従順だが、中国人はそもそもルールを疑ってかかるという傾向の違いがある。

 一時海洋資源があるとクローズアップされたので中国は動いたが、その後大した埋蔵量ではないと分かったものの、振り上げたこぶしは引っ込められなくなったのです。

 かつてのアジアでは、「国家」という概念が希薄であり、国同士の境界が曖昧な場合もあった。

 いまや、尖閣諸島問題は、国内不満を抑えるための当て馬にすぎず、お互い面倒なだけのようです。

(2)沖ノ鳥島問題

<日本の言い分>

 沖ノ鳥島は「島」である。

 日本が沖ノ鳥島を領土としなければいけない理由

 北小島、東小島で、どちらも畳2畳分程度。

 ただし、本土からかなり離れた場所に、沖ノ鳥島のような離島を複数領有しており、排他的経済水域として、日本の国土面積より広い40万平米を得ているので、これを死守したい。
 日本は、沖ノ鳥島を、285億円の巨費を投じてコンクリートと消波ブロックで保護する工事をし、「人が住める」という排他的経済水域の条件が満たせないため、発電実験計画や漁業実験計画などの「経済活動が営める」というもうひとつの条件を満たすことで権利を主張しています。

<中国の言い分>

①沖ノ鳥島は、どう見ても「岩」である。
②日本の主張は明らかに国際法違反であり、日本のわがままである。
③岩が排他的経済水域を有することはなく、その近海は中国の船も自由に活動できる「公海」である。

<中国はどうしてこういう態度を取るのか>
 ①第一列島線は、もともと中国の内海であると思っている

 東西冷戦時代に米国が共産主義勢力を封じ込めるために設定した「第一列島線」「第二列島線」という二つの軍事ラインがあり、中国としては、もともと「第一列島線」内は、中国の内海だと考えているのです。歴史的に中国を宗主国としていた国々がある地域だからです。

 ②いずれ、太平洋の覇権も取りたいと考えている

 2015年までに第一列島線を突破する
 2020年までに第二列島線を突破する
 2040年までに米国の太平洋やインド洋の独占的支配を打破する

 

(3)レアアース問題

 中国は世界で流通するレアアース(希土類)の9割以上を生産している。
 電気自動車、風力発電、医療機器、ディスプレイ、カメラレンズ、研磨剤、石油精製の触媒、戦略兵器など、これが無いと産業界はとても困ることになる。
 中国は、採掘による放射性物質の危険や高コスト、排水などの環境汚染を覚悟で掘り続けてきたおかげで、各国は恩恵に預かれるというわけです。

<日本の言い分>

①中国の輸出制限により、価格が高騰している。

②WTOのルールに違反している(輸出入の数量制限を原則禁止)

<中国の言い分>

①われわれが世界の需要の9割を担い、枯渇しなように生産計画している。

②中国がレアアースの輸出制限をしたのは計画的で、尖閣諸島での漁船衝突事故の報復措置ではない。偶然重なっただけ。

③先進国が中国のレアアースをどんどん買うから枯渇の危機に瀕した。だから輸出を制限しただけだ。WTO(世界貿易機関)の協定でも「危機的不足の防止」が理由の制限なら例外が認められるとなっている。

<中国はどうしてこういう態度を取るのか>

①米国は自国でもレアアースが採れるのに、中国の資源を安値で奪いやがって。。。という、またも被害者意識があるから。

②他の資源国より先に枯渇すれば、自分自身がはるかに高い値段で、他国からレアアースを輸入する羽目になるから。

 

2.自由と人権問題

(1)チベット問題

古来より中国とチベット民族は民族闘争してきた。圧倒的な人口を持つ漢民族がチベットに入らないよう規制し、モンゴル民族・ウイグル民族・チベット民族がそれぞれの伝統的な方法で自分たちを治めることとした。

清朝皇帝とダライ・ラマは互いの”権威”を尊重したが、次第に漢人官僚が力をつけてきて、1800年代にロシアや英国が中国への侵攻を狙うとき、ついに中国は上記三民族の統治を現地まかせにすることができず、ついに漢民族の入植を許可したため、多くのモンゴル遊牧民族は土地を失い、貧困に苦しむことになるのである。

こうして、中国に裏切られたと感じた各民族は、中国への不信感を高めてしまった。

ついに中国は、寺院の土地やその他の財産に”手をつけた”ことで、状況は一変。

<チベットの言い分>

①現在の中国のやり方では、チベット民族、あるいはその伝統や文化が滅びてしまう

②独立を求めているのではなく、高度な自治を求めている。

③チベット支援として得た利益は、漢族系の企業が得ており、チベット族には行き渡っていない。

<漢民族の言い分>

①少数民族ばかりが優遇される。不公平だ。(イスラム系には羊・牛肉を優先配給、子どもは二人までOK、大学入試では下駄をはかせる)

<中国の言い分>

①そもそもチベットは元の時代から実効支配してきた土地だ。

②中国によるチベット併合は、侵略ではなく、ダライ・ラマ以下の貴族らの奴隷から「解放」してやったのだ。

③少数民族に対しては、迫害ではなくむしろ優遇している。大学入試も甘く採点している。

 

(2)劉氏ノーベル賞問題

中国人は、自らのことを「中国人は、自分の頭脳で独創的なことを考える習慣に乏しい」とか「欧米国家が中国を敵視しているので、あえて賞を与えない」のだと思っているらしい。

 

<中国の言い分>

①劉氏は服役中の犯罪者。その者に賞を与えるのはノーベル賞を侮辱する愚かな行為だ

②中国が認めない者の受賞を指示することは、中国に対する内政干渉だ。かつてのダライ・ラマの受賞もふさわしくない。

③ノーベル賞は結局資本主義諸国の愚かな賞で、断固ノーベル賞を認めない。

④ノーベル委員会は、何をもくろんでいるのだ。彼らは、中国が発展するのが不愉快なのか。中国の政治制度が嫌いなのか。

⑤中国のことは中国人民が自分で決める。ノーベル委員会も西側政府も干渉する権利はない。

 

3.経済問題

(1)経済格差問題

共産主義で貧乏人がいなくなるはずが、みんな貧乏人になったのはおかしいといった鄧小平は、文化大革命で毛沢東に排除されたが、復活し改革開放で外資を呼び込み経済成長をはかったのだが、経済格差が広がった。

社会主義資本経済とは、「経済活動の自由」が体制の前提としてあるのではなく、共産党の承認の結果として、制限付きで認められているもの。

貧乏から抜け出したくて、一部「経済活動の自由」を認めたものの、今は格差の是正に苦慮している。

大学を出たのに、ブルーカラーの仕事しかなく、よい仕事につけず都会の片隅で住居をシェアしている20代の若者は、その生活様式から「蟻族」と呼ばれ100万人を超えた。

格差を是正するため、外資にたよる「輸出主導型経済」から「内需主導型経済」へと方向転換し、内陸部の人々の所得、消費能力を押し上げて、政府に対する不満の爆発を回避しようとしています。

<諸外国の見方>

①中国では、競争が起こらず、生産性や品質もないがしろになる。

②生産量が増えないから、たとえ金を多く持っていても買うものがない。

③鄧小平は、改革開放政策で資本主義化を進めた。

<中国の言い分>

①中国のGDPは世界二位だというが、一人当たりのGDPを見れば、日本は中国の10倍(2010年の値)もある。

②中国に経済に見合う役割を果たせというが、その手には乗らない。

③中国にとって資本主義化(で経済格差を招いたが)は理想の共産国家を実現するための手段であり、矛盾はない。

④資本主義における競争は資本家の欲望によるもの。生産財を無駄にしている。

 

(2)人民元問題 

中国経済は、”独り勝ち”とも言える状態なのに、「通貨バスケット制を模した当局のさじ加減連動性」のため、人民元レートはが変動相場制と比べるとそれほど上昇せず、輸出が有利なままということになり、輸入超過国から見ると”許しがたいこと”になります。

<米国の言い分>

①人民元を切り上げよ!

②中国製の工業製品が国内に出回って、その分、米国人の仕事が奪われている!

③人民元の切り上げは、投機マネーの流入抑制効果があるよ。上げようとしている間はどんどん投機マネーが流入し、不動産が急騰するよ。

④生活必需品などの物価上昇を抑制する一つの方法が、人民元の切り上げである。

<中国の言い分>

①日本が一気に変動相場制に切り替えて、急激な円高に苦しんだことを知っているから、同じ轍は踏みたくない。

②米ドルのみが「世界の基軸通貨」なのは、おかしいんちゃうか!

③アメリカが人民元の切り上げを迫るが、「人民元はゆるやかに改革してゆく」のだ。

④中国も世界のトップクラス入りで、変動相場制にしたいが、時間がほしい。

⑤アメリカの国債をたくさん保持しており、人民元の切り上げで価値が目減りする。

⑥人民元の切り上げは、物価の上昇を抑制するが、輸出産業がダメージをうける。

 

(3)環境問題

<英国人の私的>

①中国では生物種の絶滅が、世界平均より50~60%も速く進行している。

②揚子江イルカの絶滅の原因は水質汚染やエサとなる魚の乱獲である。

③長江は6300kmととても長いため、汚染水が海に出るまで時間がかかり生活用水に混入しやすい。

<中国の言い分>

①中国の環境問題は、そもそも先進国の企業が中国に工場を作ったからだ。

②その問題を中国に解決しろとは何事か!聞く耳持たんわい!

③一人当たりの温室効果ガスの量は、アメリカのほうがはるかに高い。なに言ってるんだ!

<中国はどうしてこういう態度を取るのか>

①排水を垂れ流している企業が、現地の高額納税企業であるため、市の環境局も汚染のデータを見逃し、重い腰を上げないので、住民の多くは諦めムード。自分の身は自分で守るしかないと思っている。

4.政治・外交問題

(1)政治体制と後継者問題 

2012年以降は、習近平が中国の指導者となる。

中国共産党は武力で権力を勝ちと取った革命政権である。したがい、軍の力は大きく、この軍を統率する地位に立つことが、権力を完全掌握するためには必要である。
また、共産党以外にも8つの政党があるが、原則として友党であり、全ての政党が共産党に協調します。

<日本の見方>

①共産党に入党できるのは限られた人のため、出世などの自分の利益が動機で入党する「赤い帽子をかぶっているだけ」の人も多く、汚職などの「腐敗問題」が深刻化している。(ということは、腐敗問題は中国共産党の本質ではないということになる。)

②中国の国家体制は「強い組合がない企業みたいなもの」だ。
(ということは、日本のブラック企業を連想すればいいのでしょうか。とても分かり易い例えです。中国共産党のような日本の企業からは、優秀な若い社員が退職するのは自然な流れと言えるでしょうか。)

③中国の体制では、共産党や政府で権力の中枢に近づくほど、民意を汲み取るより、自分の周囲や上部の評価を高めることに注力しがちです。一方で庶民の指示を失っては、政権運営ができなくなることは認識しており、国民が不信感を持たぬよう心を砕いているため、他国がイメージするほど偏狭な独裁体制というわけではない。

<中国の言い分>

①とにかく共産党が一番偉い。軍も統括する。

②三権分立は不要。全国人民代表大会が立法、司法、行政すべての責任を持つ。

(2)靖国問題

日本では、「中国を好きではない」人が、6割以上を占める状況が続いています。

中国でも、満州事変での日本のやり方に対して「反日感情」が極めて高かったことから、ずっとその状況が続いています。

ただ、人民はともかく、中国政府は日本との国交正常化を望んでいる。日本との関係回復の中国側の論理は「すべての責任は日本の軍国主義にあった。日本の人民は中国人民と同様に、戦争の被害者だった」として、日本人に逃げ道を残したのですが、日本政府要人の靖国参拝がやまず、中国人民に対してアピールするために、日本側を厳しく批判するという構図になっています。

また、日本には「死者に鞭打たず」という伝統がある一方、中国は政治的にしかとらえていないため、関係がこじれる一因となっています。どちらが悪いんでしょうね。

<日本の言い分>

①戦没者に哀悼の意を表して何が悪いのか。

②戦争責任は、何も戦犯だけにあるわけではない。

<中国の言い分>

①中国への侵略戦争を実行した戦犯を祀る靖国神社へ日本政府の要人が参拝するのはけしからん。

②あの侵略戦争は日本の一部の軍国主義者のしわざであり、日本国民に非は無いと譲歩しているのだから参拝はやめてもらいたい。

<中国はどうしてこういう態度を取るのか>

①中国人にとっては、日本人=南京大虐殺30万人

②日本及び西側諸国で、言論や表現の自由が認められていることは知識として知っているが、それを感覚的に飲み込めない。

③戦争の責任問題で絶対に妥協はできない。なぜなら共産党政権の正当性の最大の根拠が「日本の侵略から中国を守った。共産党にしかできなかった偉業だ」からなのです。

 

(3)北朝鮮問題 

米中ソの三つ巴状態。中ソも対立している。

<米国の言い分>

①民主化要求の弾圧は許せない。

②しかし改革開放そのものは否定しない。

<中国の言い分>

①中国の言うことを聞かないから、ほんとは嫌いだ。

②同じ共産主義なので、表面上は北朝鮮を守っている。

③北朝鮮は、在韓米軍との壁だから崩壊は困る。

④北朝鮮が米国に反発姿勢を見せること自体は、中国にとって歓迎ですが、戦争にまで発展しかねない緊張はお断りだ。

 

5.中国人の意識

(1)中国人とは何か?

日本人、中国人、韓国人は、同じ東アジアの民であるが、ものの見方や感じ方、価値観には大きな差があり、それは中国人と韓国人とでも同じことである。

日本人は揉め事を好まないが、中国人は違います。交渉自体を「もめごと」ととらえる感性はありません。むしろ、交渉事にはファイトを燃やします。

<日本の言い分>

①中国は、歴史は古くとも国際社会ではピカピカの新人である。日本で言えば、明治維新後の勃興期である。

②中国人にとってタフな交渉は日常茶飯事であり、最初に高値を言うのは当たり前で、交渉事で「頭に血が上ったら負け」である。むしろ「交渉で結果を出す過程に喜びを感じる」ぐらいの気持ちで臨んだ方がよい。

<中国の言い分>

①清朝以来、中国はいつも歴史の被害者であった。中国は何も悪いことはしていないのに、外国は何かと中国にちょっかいを出してきた。今でも中国は「いじめられっ子」だ。

②中国国内のルールは、お上が庶民を押さえつけるためにつくったものだ。だから庶民は自分の得になることは守るけれど、そうでないものは無視する。

③契約なんてものは一応の取り決めにすぎない。(ここがもめるもとですな)これを遵守するという考え方はナンセンス。どんなことも途中で「状況が変わる」ことはあるのだから。状況に応じて、約束を変えてもらう交渉をするのは当たり前のことだ。

④中国人が「原則」と言ったら、日本人の考える「一応・・・」的な意味ではなく、「これだけは、絶対に譲歩できない」という意味である。

<中国はどうしてこういう態度を取るのか>

①国としての被害者意識が主導的な中国人は、何をするにあたっても「自分たちは悪いことはしていない」と考えがち。「外国に対して悪いことはしたことがない」と認識してしまっている。

②いじめられてきた中で、富国強兵を進めてきた中国に、自分たちが加害者になりうるという意識が希薄である。

③おかしいと思ったルールは守らない、という意識が浸透している。