『許されようとは思いません』 芦沢央 あらすじ ちょい ネタバレ 感想

はじめに

表題のほか四編を含む短編集である。
・目撃者はいなかった
・ありがとう、ばあば
・姉のように
・絵の中の男

芦沢央のちょっと怖い何かが。

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たった一日で人生が変わってしまう 『明日、世界がこのままだったら』 行成薫 感想 あらすじ ファンタジーか?

はじめに

死にそうな人が、ほんとうに死んでしまうまでの間に訪れることになるのが「狭間の世界」である。

実際は思い出の風景が狭いエリアに存在して、人は存在しないという世界で、生きていた環境への未練を絶ち、魂だけになるところだと言う。

今までいろんな死後の世界を読んだ気がするが、わりとしっくりきたのは初めてではないだろうか。

さて、そんな一人ぼっちのはずの世界に、神様の手違いで、同じところに若い男女が招かれてしまった。

どうせ死ぬのに今さら恋もしないし、食べなくても死なないはずが、他人というか若い異性が近くにいるせいで、生への欲望と戦わねばならぬ状態になっていく。

そして、神様の手違いで、どちらかだけが生き返ることができると神の使いから知らされる。

打ち解けてしまった二人は、自分と他人の生と死の選択を迫られるが。。。


つづく

ふたりの選択は? 続きはこちら

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人工知能に小説は書けるか?ポロック生命体 瀬名秀明 新潮社

はじめに

「人工知能に小説は書けるか?」というフレーズで始まると、次のようなことを考えてしまう。

2024年の今なら、ChatGPTを知った我々は、ある程度条件を提示してやれば、書けてしまうよ、と思うかもしれないが、この書籍が世に出た2020年にはChatGPTはまだ無かったと思うから、この著者は今の状況を予言したのか、と。

いやいや、似たようなものは、遠い昔からあったのかも知れない、と思い直して先を読む。

 

4.ポロック生命体


『あの日は立冬を過ぎたばかりの、良く晴れた土曜だった。』


<登場人物>

石崎剛史 –   石崎博史    – 水戸絵里(博史の教え子、研究者)
光谷一郎 –                     – 今日子(絵里の友人、出版業界)

石崎剛史
:作家、ペンネームは上田猛故人

石崎博史
:元研究者、AIシステム(ポロック生命体)の開発者でCEO

光谷一郎
:画家、上田猛の本の装丁、故人

柾目(まさめ)
:作家、石崎博史のAI開発に影響を与えた


ストーリーは、研究者の水戸絵里が、友人の今日子から、かつての先生である石崎博史が今日子の祖父光谷一郎の画風をAIに学習させて、それを広告会社に売って、何千万円も稼いでいるという相談を受けたが、その石崎先生から電話が掛かってきた、という流れで始まる。(作家の上田猛こと石崎剛史と光谷一郎は、作家と本の装丁者として長年コンビを組む仲であったが、今は共に故人である。)

いまや漫画家の手塚治虫さんの漫画をAIで創作させたり、亡くなった歌手を画像と音声で蘇らせたりと、なんでもありの感じの世の中になってきている。。。

過去の画家が辿り着けなかった高みに人工知能が行けるのなら、それは誰の模倣でもない、創造的な著作物だといえるのではないかな。』

著作権との戦いが始まる、と思った。

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「忘れられたその場所で、」 倉数茂 (ポプラ社)

はじめに
花巻で発見された男の凍てつく死体、発見した女子高校生が迷い込んだ「忘れられたその場所」はハンセン病と深く関わっていて、犯行動機は怨恨の線が考えられた。シングルマザー刑事の川野絵美と新米刑事の麻戸浩明はぶつかり合いながらも真相を探り出していく。

 

登場人物

推理小説ではないため、複雑な人間模様が描かれていますので、簡単に人物紹介を整理しておきます。それにしても登場人物が多いのではないでしょうか。久しぶりに二回読みました。当初不明だった点がつながったりして、二度読みも悪くないなと思いました。

第一発見者(美和)の関係者
・滴原美和 東京からの転校生 不思議
      な影を見ることがある
・滴原千秋 美和の兄 盛岡の大学生 
      美和と花巻で二人暮らし
・春奈   美和の同級生
      花巻の高校二年生

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香港警察東京分室 Hong Kong Police Force Tokyo Branch  月村良衛 2023.4.26 発行 第169回直木賞候補作

はじめに

過去に、月村良衛さんのコルトシリーズを読んだときの、主人公やその仲間たちと敵対するグループらとの戦闘シーンの迫力がものすごかった印象が残っていて、今回はその現代版とでもいうべき傑作だ。

背景には、中国という国家と、香港の民主化運動などが絡んでくる事件に、母と子の悲劇や愛情といったドラマも内包されており、読みだしたら止まらない。

内容の紹介

登場人物については本書の最初の方に掲載されていて読書の助けになります。
これを見ると、日本と香港の警察組織の構造的なものが非常によく似ていることがわかります。

物語のなかでも、バディとして捜査に当たるのは、同格の人同士で、それぞれのキャラクター設定のバランスが非常に効果的でよく、各キャラの戦闘能力にも目を射張ります。

とくに女性の水越管理官のキャラクターは素晴らしく、厳しい捜査指揮のなかにも、ユーモアやゆとりがあり、こんな上司なら付いて行くしかないと思ってしまいます。

東京に設置された特殊共助班(特助班)が、香港警察東京分室と揶揄されながらも、香港でデモを扇動し日本に逃亡したキャサリン・ユー元教授を逮捕する任務を協力して遂行する。東京では、香港警察には捜査権が無いためにチームを組んで捜査にあたる

そこに集められた警官たちは、各部署の厄介者などではなく、その実態は。。。

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お読みいただきありがとうございました。
いかがでしたでしょうか。
香港警察チームとの腹の探り合いをしつつも、やがて強力なバディとなっていく様子も面白いし、中国政府と日本政府の人知を超えた取引に、ほんとうに法治国家などあるのだろうかと考えさせられたり、深い母の愛に感動したりと、最後まで楽しめる内容でした。

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