川上未映子さんの「春のこわいもの」を紹介します。六編からなる短編小説です。コロナ禍の日常での精神が危うくなりつつある女性、男性が描かれています。
青かける青
入院している若い女性が、手紙を書く。
でも、ほんとうは、自分はおばあちゃんではないだろうかと考えたりする。
病院の規則正しい生活は退屈で、入院患者を余計な妄想へと導いてゆく。
あなたの鼻がもう少し高ければ
トヨはSNSのインフルエンサーを目指し、フォローしているモエシャンの面接を高級ホテルで受ける。整形を勧められたり辛辣な言葉を受けたりしたあげくに不合格である。トヨとマリリンは不合格のショックを共有し、カフェで話すことになる。
それにしても、東京では普通のカフェの店員でさえ、超美人で、すかしているのだから、その見栄えで面談に行くなんて、SNSの仕事をなめてはいけないということか!
不合格になった二人の女性は、立ち直れるのか。
花瓶
死期が近づいた老婦人が、好きなことを語る。通いの家政婦さんがいるくらいだから、恵まれた環境の老婦人だろう。
その老婦人は、家政婦さんの後ろ姿、“体じゅうに張りきった肉”を見て、若い頃、三十九歳のころの夫じゃない人との性交を思い出す。
そして老婦人は、家政婦さんにある要求をする。。。
寂しくなったら電話をかけて
四十一歳の女の日常。
コロナで自分の部屋にいる時間がずっと続いている。
どうでもいいニュースと分かっているのに、見てしまうスマホの画面。
わたしも、あまりに画一的な情報や、芸能人のプライベートなど読んでも時間の無駄だと思い、ホーム画面を「日経新聞」にしてみたが、あなたもどうだろうか。
彼女のような平凡な人が、人と会わなくなると、ふとつまらない犯罪に手を出してしまうのかも知れない。
ブルー・インク
ものを書いて残すことに慎重な学生がいた。
たしかに、ネット上にさらした罵詈雑言は、証拠としてずっと残ってしまう。
だから、読書感想文は書かない。粗筋なら書く。
推理小説であれば、まずネタがバレるようなことは書かない。
そんな彼女が、たいへんな思いで書いたであろう手紙を失くされて、それはショックだったろうと思う。
この結末で作者が何を表現したかったのかが、いまひとつ分からない。これも春のこわいものか!?
娘について
突然の過去の人からの電話やメールもこわい。
それが、悪いことをしたと思っている人からなら、なおさらだろう。
そうそういう相手である「杏奈」から電話を受けた「よしえ」。
「よしえ」は、過去に「杏奈」と同居していたが、意見が合わなくなり同居は解消した。
その時代の杏奈の身勝手さや自由さ、お金に不自由しなかった家庭環境にイラついていた。
「杏奈」が女優として成功しないように導いていたことや、電話で杏奈の母に彼女には才能がないといったことを話していたことを思い出し、その復讐が始まったのではと恐れた。
電話してきた理由が気になって、とうとう「よしえ」は「杏奈」に自分から電話してしまう。
杏奈に紹介された健康オイルに興味を持ったフリをすると。。。
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〆